「常に自分が指した手が最善手」—羽生善治さん。

Interview 羽生善治

アイデアを実用化して革新を起こす。

――10代から40代の今まで現役でずっとご活躍されている羽生さんですが、20代でしておいた方がいいことってありますか?

 将棋の世界もビジネスの世界も共通するところがあると思うのですが、20代では溢れんばかりの新しいアイデアや発想を一つでもいいから、いかに実用化していくことが重要です。将棋の世界では、ファッションと同じように流行というものがあるのですが、その最先端の形をつくっているのが、十代後半から二十代前半の若い人たちです。そのアイデアや発想の1割にも満たないようなものが非常に画期的な技術革新を生んできました。
 アイデアを一つでも、実用化する力。
それが革新を起こす種になります。僕は40代ですが、今もアイデアを生んで形にしていきたいと思っています。まだまだ若い人たちに遅れをとらずに、僕自身もやっていきたいですね。

知らないから強い。

――羽生さんは20代の頃、どんな“戦い方”をしていたんですか?

 20代の頃は、記憶力とか反射神経とか、瞬発力とか、あるいはちょっと大胆な選択とか、そういった若さゆえに自分の中にある潜在能力を全部使っていい運気をつかんでいくという戦い方をしていました。そうやって小さくても、積み上げた知識と経験を、自分なりに消化して、いかに具体的に役立つ、実践的なものに変えていくのか。
少ない情報や知識でもいいんです。それをしっかり実践に活かすことができれば、多くの情報は必要ない。
若い人たちは知識や経験、スキルがないからこそ強いんですね。知らないから強い。
たくさんある情報とかデータとかすべて学ぶ必要はなくて、いいとこ取りをしちゃえばいいんです。経験を重ねてたくさんのことを知ってしまうと、思い切った選択はできなくなって、意図的に思い切った選択をしていかなきゃいけなくなる。
 だんだん経験を積んでくると、これを学ぶために十年かかったとか、これを身につけるために二十年かかったとか、そこにしがみつくようになってしまう。
 若い人たちはしがみつく必要はまったくないのだから、これは必要なもの、必要ないものとある意味ドラスティックに割り切っていけばいいんです。

実践に結びつけるプロセスを積む。

――20代でどのような力、どうやって身につけたら良いのでしょう?

 そこで求められるのは、少なくても自分が持っているもの、必要なものを具体的に使えるものに変えていくこと。少ない知識や経験、そこから得た必要な力、それを具体的にどう仕事という実践に結び付けていくかというプロセスを得る。それは実践で学んでいくしかないんです。僕自身も実践の中で身につけてきました。今当時の棋譜(記録)を見ると恥ずかしい。でもそういうプロセスが大事なんですよね。


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